診療科のご案内

当院は、これまでに6,000例以上の心臓血管外科手術を行ってきた、樋上哲哉医師を名誉院長・心臓血管センター長に、また、心臓血管外科部長に宮木靖子医師を迎え、心臓血管外科の診療を再開致しました。樋上名誉院長と宮木部長を迎えることができたのは、当院の誇りでもあり患者さんとの信頼の絆を強くするものと確信しております。

当科では、名誉院長 樋上医師の「医療は患者さんのためのみにある」との信条のもと人間味あるチーム医療を実践して参ります。
 冠動脈バイパス手術を飛躍的に進化させたとされる超音波メスによる内胸動脈採取法の開発者としても知られ、虚血性心疾患だけでなく、弁疾患、大動脈疾患など、どの領域でも堅実な成績を残しており、厚い信頼が寄せられています。

当院 心臓血管外科の手術手技 ~ 世界レベルの心臓血管外科手術 ~

名誉院長樋上医師が開発した超音波メスによる内胸動脈採取法は、超音波メスを使って安全に、尚且つスピーディーに左右2本の内胸動脈をはがすことができ、術後に血管が詰まってしまう確率が格段に下がりました。現在、国内で行われている冠動脈バイパス手術の8割が樋上医師の手技を取り入れています。
 樋上医師の粘り強い研究の結果、冠動脈バイパス手術で使われるグラフトの質は格段によくなり、これまでほぼ全例において、動脈グラフトのみによる人工心肺を使わない心拍動下冠動脈バイパス術を行ってきました。
 このバイパス術は、99%以上の救命率と良好な長期グラフト開存が実証されています。例えば、5年以内の狭心症再発率は3%以下となっており、従来のやり方に比べて格段に良好な成績を得ています。
 また、僧帽弁疾患においても、樋上医師は術中心拍動下逆流評価法という画期的な治療法を開発しました。この手法は、弁形成術の術中に大動脈を遮断したまま心臓を動かし、逆流がないかどうかを確かめることができます。その場で弁の状態を確認できるため、術中に微調整ができ、ほとんどの例で残存逆流ゼロの完成度の高い僧帽弁形成術を実現しています。

心臓手術後の回復の早さ

超音波メスによる内胸動脈採取法を応用した心拍動下冠動脈バイパス手術は、心臓を止めない低侵襲な手術です。また、そのほかの心臓血管手術においても、手術の技術の確実性が高いことはもとより、患者様を中心としたチーム医療を展開している結果、術後の回復も早く、手術直後からリハビリを開始でき、200m歩行が術後5日で達成できています。
当院は、10年20年たっても再手術の必要のない、より質の高い治療を行ってまいります。どんな合併症を持った方でも、一日も早く元通りの生活に戻れるよう精一杯お手伝いさせて頂きます。

心臓大血管外科が扱う手術について

冠動脈バイパス手術

閉塞した動脈の代わりに血液の流れる別の経路を自分の血管で新しく作る手術です。

  • 心拍動下冠動脈バイパス手術(オフポンプ冠動脈バイパス術:OPCAB)

冠動脈バイパス手術

弁形成術

「弁閉鎖不全症」に対して行う手術で、何らかの理由によって壊れた心臓の弁を修理することによってその機能を回復させます。

  • 僧帽弁形成術(自己弁温存術:RZT-MVP)
  • 大動脈弁形成術
  • 三尖弁形成術

僧帽弁形成術

弁置換術

おもに「弁狭窄症」に対して行う手術で、動脈硬化などによって壊れた心臓の弁を人工のものに取り替えます。

  • 大動脈弁置換術
  • 僧帽弁置換術

弁置換

大血管手術

「大動脈瘤」「大動脈解離」に対する手術で。傷んだ大動脈を人工血管に置き換えます。

  • 選択的脳保護下弓部全置換術(NSCP-TAR)
  • ステントグラフト内挿術(カテーテルで大動脈瘤を治します)

大動脈瘤手術

末梢血管手術

詰まった血管の血流を外科的に取り戻す手術です。「閉塞性動脈硬化症」に対して行われます。

  • 下肢バイパス手術
  • カテーテルによる血管内治療

末梢血管手術

静脈瘤手術

下肢の静脈のうっ血が原因の足のだるさ・静脈怒張・こむら返り・浮腫みに対する治療を行います。

  • 高周波カテーテル治療(ラジオ波:TT)
  • 瞬間接着剤による血管内治療(NTNT)
  • 硬化療法

静脈瘤手術

心臓の仕組みについて

心臓は全身から戻ってきた血液が右の心臓に入り、肺に送り出されます。その後、肺で綺麗になった血液が左の心臓に入り全身に送り出す、ポンプの役割をしています。
心臓は効率よく血液を送り出せる様に心房と心室に別れています。左右合計して4つの部屋に分かれています。それぞれ部屋と部屋の間には扉がついており、その扉を弁と呼んでいます。血液が一方向に流れるようにする一方向弁の役割をしています。

心臓弁の解剖

心臓の弁は心臓にある4つの部屋にそれぞれついており合計4つありますが、この弁が壊れる病気のことを総じて弁膜症と呼んでいます。心臓の弁はそれぞれ名前がついています。右の心臓の入り口の弁は三尖弁・出口の弁は肺動脈弁、左の心臓の入り口の弁は僧帽弁・出口の弁は大動脈弁と言います。

冠動脈の解剖

心臓は筋肉でできており、心臓の筋肉を栄養する血管を冠動脈と呼びます。
心臓の筋肉を栄養する血管は冠動脈と呼ばれ、左冠動脈と右冠動脈とがあり、そのうち左冠動脈はすぐに心臓前面に走る前下行枝と心臓の裏側に回る回旋枝があり、3系統に分類しています。左右の冠動脈は心臓の出口、つまり大動脈起始部から分岐しており、前下行枝と回旋枝に分かれる前の血管を主幹部と言います。

① 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞について)

病態と診断

冠動脈の血流量は全血流量の5%を占め心臓のポンプ運動を支えています。冠動脈が何らかの原因で狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)してしまうと、酸素需要に見合った血液を心筋に送ることができなくなり、心筋が虚血に陥る病態を虚血性心疾患と言います。
狭窄や閉塞の原因の多くは、動脈硬化(粥状硬化)によるものであり、動脈硬化の5大原因としてタバコ・高血圧・脂質異常・肥満・糖尿病があげられます。
狭窄や閉塞はカテーテル検査や冠動脈CT検査で直接冠動脈の状態を観察することで見ることができます。

治療方法

軽症ならば狭窄の進行を抑える投薬治療を行います。狭窄が進行している場合(冠動脈の断面積の75%以上の狭窄がある場合)には、手術やカテーテル治療を行います。
カテーテル治療と手術との線引きは、年齢やその方の生活レベルによって違ってきます。手術をすることになる病状は冠動脈主幹部に病気がある場合や3本ある冠動脈の3本ともに病気がある場合です。一方で、1分1秒でも早い治療が必要となる急性心筋梗塞や冠動脈の1本もしくは2本の病変がある場合はカテーテル治療になる場合が多くなります。

冠動脈バイパス手術

この手術は1945年に、Vinebergという人が冠動脈を心筋に埋め込むということで始まった術式で、昔は人工心肺で心臓を止めて手術を行ってきました。
1980年代になり心臓の局所拍動を止めるスタビライザーという器材や心臓の裏側の血管を縫える様に心臓をひっくり返す(脱転)技術が開発されることによって、心臓を止めることなく手術を行うことができる様になりました。
この、「心拍動下冠動脈バイパス手術」は、人工心肺を使用しないことで、術後の脳梗塞や出血・腎機能障害・肺障害のリスクを格段に減らすことができ、低侵襲手術と言われています。
しかしながら、心拍動下冠動脈バイパス手術は技術的には難しいとされており、特に人工心肺を使用するのと同じ吻合の数と吻合の質を得ることが難しいとされています。また、心臓の脱転時の安定した血行動態を保つことも機材の問題だけでなく技術の高さが要求されます。

私たちの手術の特徴

樋上哲哉名誉院長が世界に先駆けて開発した「ハーモニックスカルペルによる内胸動脈採取法」によって、つなぐ血管(グラフト)を質の良い血管を太く長く採取することができることで吻合の数や質を落とすことなく、かつ独自の心臓脱転法により血行動態の変化を最小限にした手術を行うことができております。私共のチームでは過去12年間(約350例)は人工心肺を使用する手術に移行した方は1人もおられません。
また、使用するグラフトにもこだわりを持っています。グラフトになる血管は左右の内胸動脈・胃大網動脈・橈骨動脈・大伏在静脈などがありますが、どの血管を選ぶかは血管の開存率に大きく関わります。内胸動脈は10年後でも90%以上の開存率が見込まれます。一方で大伏在静脈は10年後の開存率は約50%です。胃大網動脈と橈骨動脈はそれぞれの開存率について約75%程度というデータが出ておりますが、何れにせよ静脈より動脈グラフトの方が成績が良いとされております。また、吻合の仕方もできるだけ大動脈との吻合を減らし吻合箇所を少なくして開存率を高めるin-situグラフトが良いとされております。
私のチームでは、「動脈グラフトを優先」し、「大動脈吻合を避けin-situグラフトを使用」する方針で手術を行っております。

当科での手術成績

当院では2020年2月26日から心臓手術を開始しました。
9月30日までの心臓手術件数は8件です。その患者様も術後成績・経過ともに良好です。
順次成績はアップさせていただきます。

担当医プロフィール

名誉院長 心臓血管センター長

樋上 哲哉(ひがみ てつや)

[出身大学] 昭和57年 神戸大学医学部 卒業
[資格等] 医学博士(神戸大学)
日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医
日本外科学会外科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本脈管学会脈管専門医
日本外科学会専門医・指導医
日本胸部外科学会専門医・指導医
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医
日本心臓血管外科学会(評議員)
日本血管外科学会(評議員)
日本冠疾患学会(理事)
日本心臓病学会(FJCC)
日本組織移植学会(評議員)
ライフサポート学会(顧問)
日本臨床外科学会(評議員)
日本人工臓器学会 他
European Association for Cardio-thoracic Surgery (active member)
Society of Thoracic Surgeons (active member)
International Society of Cardiovascular Surgery
The Asian Society for Cardiovascular Surgery
[略 歴]
昭和57年
神戸大学医学部附属病院(第二外科)
昭和62年
兵庫県立姫路循環器病センター 医長(心臓血管外科)
平成13年
神戸大学大学院医学系研究科講師(呼吸循環器外科学講座)
米国ミシガン大学外科 専任講師
島根医科大学医学部 教授(外科学講座 外科学第一)
平成15年
島根大学医学部 教授 (外科学講座 循環器・消化器総合外科学)
平成17年
島根大学医学部 卒後臨床研修センター長[兼任]
平成18年
札幌医科大学医学部 教授(外科学第二講座)
平成20年
札幌医科大学医学部付属病院 病院長補佐[兼任]
平成25年
札幌医科大学医学部 教授(心臓血管外科学講座)
平成27年
葉山ハートセンター 院長・心臓血管外科センター長[兼任]
平成29年
神戸徳洲会病院 病院長・心臓血管センター長[兼任]
[専門分野]

成人心臓血管外科
冠動脈外科・・・心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)、超音波メスによる左右内胸動脈使用 など
弁膜症外科・・・僧帽弁形成術(自己弁温存術)、超音波郭清による石灰化大動脈弁置換術 など
大動脈外科・・・選択的脳保護下 弓部全置換術、ステントグラフトによる胸部大動脈置換術 など

[高度先進医療分野]

再生医療・・・自己心膜再生、小口径動脈再生 など

[心臓血管外科手術の累積執刀数]

約7,000例

[主な研究分野と特筆テーマ]

冠動脈外科・・・”Ultrasonic Complete Skeletonization” for the ITA Off-pump coronary artery bypass grafting only with in-situ arterial grafts
大動脈外科・・・”Non-clamping selective cerebral perfusion” for total arch replacement
弁膜症外科・・・”Retrogrande cardioprotective beating test” for Mitral valve plasty
不整脈外科・・・Pulmonary vein isolation on off-pump beating heart
心筋保護法・・・”Retrograde continuous cold blood cardioplegia” for open heart surgery
再生医療・・・Decellularized artificial conduit for small-size artery

[主な著書]

超音波メスによる新しい内胸動脈採取法
Ultrasonic Complete Skeletonization法

心臓血管外科部長

宮木 靖子医師

[出身大学] 平成14年 杏林大学医学部 卒業
[資格等] 医学博士(札幌医科大学)
日本外科学会 専門医
日本心臓血管外科学会 専門医
日本循環器学会 専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
European Association for Cardio-thoracic Surgery (active member)
[略 歴]
平成14年
慶應義塾大学病院 外科入局
平成17年
慶應義塾大学病院 外科(心臓血管)
平成20年
札幌医科大学 第二外科(心臓血管)
平成24年
札幌医科大学 心臓血管外科 助教
平成27年
葉山ハートセンター 心臓血管外科部長
平成29年
神戸徳洲会病院 心臓血管外科部長
令和2年
当院勤務
[専門分野]

成人心臓血管外科
弁膜症手術・・・・超音波郭清(脱灰)による大動脈弁及び基部手術。自己弁温存による僧帽弁形成術, 三尖弁形成術.再手術を含めた複合手術 など
冠動脈手術・・・・超音波メスによる左右内胸動脈及び胃大網動脈採取法完全心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB) など
不整脈手術・・・・左房メイズ手術 など
末梢血管手術・・・下肢血行再建術.(下腿を含む)シャント造設術.( A-Vシャント, 人工血管など)
下肢静脈瘤手術・・ラジオ波による静脈瘤血管内焼灼術硬化療法 など
大動脈外科・・・・選択的脳保護下 弓部全置換術,ステントグラフトによる胸部大動脈置換術 など

  • 心音
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外来診療時間

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午後
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tel. 097-544-8800